東京高等裁判所 昭和27年(う)658号 判決
原審第一、二回公判調書には、検察官の証拠調請求について、裁判長が弁護人に意見を求めて、弁護人が意見を述べた記載があるが、裁判長が被告人に意見を求めて、被告人が意見を述べた記載のないことは所論のとおりである。しかしながら、このことから、当該公判廷において裁判長が特に被告人の発言を抑えて弁護人にのみ右の意見を述べさせたものとは解されない。
公判廷に被告人と弁護人とが共に出席している以上、かかる場合裁判長が特に被告人の意見を求めなかつたとしても、専門家たる弁護人は、必要に応じて被告人自身の発言を促すこともできる筈であり、その他被告人とは自由に連絡し得るところである。本件においても、右公判廷においては、被告人と弁護人とが連絡を妨げられていたものとは解されないから、右各公判調書に検察官の証拠調請求につき被告人が意見を述べた記載がなく、且つ、弁護人の意見について被告人が異議を述べた記載もないところからみれば、この点については、被告人は弁護人と同一意見であつたものと解される。従つて、原裁判所がそのまま証拠調手続を進めたとて、該手続には、所論のような違法は存しない。
論旨は理由がない。
同第三点について。
原判決援用の司法警察員作成の検証調書については、原審第二回公判調書によれば、当該公判において検察官の取調請求に対し弁護人がこれを証拠とすることに同意し、被告人が右弁護人の意見について異議を述べなかつたことが明らかである。且つ該検証調書の記載並びに原審公判廷における証人岡田正人及び同黒沢竹次郎の各供述に徴し、なお、その余の証拠と比照するも、該検証調書に顕れた検証は、適法に行われたものと解されるところである。従つて、該検証調書に裁判官の令状が添附されていないことを理由に、所論のようにその証拠能力を否定することはできない。
原審の証拠調手続及び原判決の採証には、所論のような違法は存しない。
論旨は理由がない。
(註 本件は量刑不当により破棄自判)